Style | Twisted Oxford "Harriet"


bespoke classic
六義RIKUGHI
Classic Bespoke Shoes | Style





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bespoke classic
六義RIKUGHI
STYLE | Twisted Oxford "Harriet"
designed by Ryuichi Hanakawa copyright 2005 all rights reserved



その当時は、イスラ・ムヘーレス島の「ホテル」を前もって予約することは適わなかった、イヤ、本当の話だ、

では、どうするか、、、
観光客を乗せた小さな船が入江につくと、島の子供たちが待ち構えていて、われ先にと観光客の鞄を奪い合う、
「ホテル」まで荷物を「運ぶ」のが彼らの大事な稼ぎなのだ、
子供たちは、島の「ホテル」を順繰りにまわっていき、折り角、部屋のある「ホテル」に到着したところで、チップを子供に渡す、我々はただ、子供についていけば良い、、、 それがこの島の「システム」なのだ、

「それが、一番安全で確実です、」と渡し舟の船頭は言う、下手に自分で「ホテル」を探さないことです、と、、






島の「ホテル」といっても、B&B程度のもので、よくて中庭を囲むように部屋を配したスペイン風なのが、ちょっとは洒落ている部類だった、
そうした「ホテル」の部屋は、日中の暑さをしのぐためにヒンヤリとした石が床に張られている、部屋というよりは「外」が壁で一応仕切られているだけで、部屋も「自然」の一部として繋がっている、エアコンなんぞは端から無い、なにしろ、ここは由緒ある「海賊の島」なのだ、






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島の貸しバイク屋で、中古屋でも引き取りそうにない年季の入ったバイクを借りて、彼女を乗せて島見物と洒落てみるも、ものの30分で島を一周できた、海賊の島は存外、小さな島なのだ、

スコールの後の建てつけの悪い道には、所々に大きな水たまりが出来ていて、走り抜けると水しぶきがあがる、そのたびに彼女は子供のように嬌声をあげた、

海に囲まれた島の道は、いつもカリブの潮風に巻かれていて、アクセルを吹かすとバイクは海賊のように水平線の向こうへ飛び込んでいきそうだ、 





島の砂浜には、野生のペリカンが歩き、海に入ると色鮮やかな熱帯の魚が身体の横をすり抜けていく、空の色と移りゆく雲と光に見とれるうちに、一日は過ぎる、

夜は、戸外のレストランで巨大なロブスターや、サボテンのステーキを喰らい、陽に灼けた肌をいたわり合いながら愛し合う、

ニューイヤーイヴは、島の人たちに混ざって踊り明かした、




しかし、楽園の日々もやがては終わりをつげる、

所詮、我々は都会の住人なのだ、

島の唯一の特産品である「タートル オイル」をお土産に買い、(当時、亀の油が特産品で、島には巨大な養殖池があった、)島に別れを告げ、チェチェンイッツアのマヤの遺跡や、「白い都」とは名ばかりのバイクの撒き散らす排気ガスに溢れた地方の村をまわりながら、やっと旅の終点、メキシコシテイに我々は辿りついた、






当時のメキシコシテイは、有名な地震の傷跡が街のそこかしこにまだ残っていて、積み上げられた瓦礫の横に豪華に巨大なホテルが並んでいるのは少し異様だった、

私は、旅の仕上げにメキシコシテイ一番の笑ってしまうぐらい豪奢なホテルのスイートルームを用意していたのだ、

ところが、久々の近代的な設備に気が緩んで都会の気侭さを思い出したのか、どうしたわけか、私たちは真夜中に大ゲンカを繰り広げるハメに陥った、、、何が原因だったかも思い出せない、口論の末に勢いあまった私はフロントに電話をかけ、もうひと部屋用意するように告げた、今夜は別々に眠ろう、、、私は若かったのだ、許して欲しい、、


私の勢いに慌ててフロントマンが部屋に駆けつけ、この真夜中に部屋を変えるのは、、とか、極く公平で常識的な理屈で私を諭そうとするが、若い私は、持ってきた別の部屋の鍵をひったくるとサッサとエレベーターに向かった、

まだ、シーツカバーのついたベッドに憤懣やるかたなく潜り込んだときベッドサイドの電話が鳴った、憤然として受話器を取るとナイトポーターが、ご事情はお察ししますが、新しい部屋のチャージもお支払い頂けますかと恐る恐る聞いてきた、私は「もちろん」と言い放ち受話器を切った、、、


安らかに眠れるはずもなく、私は戒めを込めて呟いた「女ヶ島に女人を連れて行くベからず、、」、私はその夜、夢のなかで海賊になって大暴れした、、、





この旅で、私はもう一足、「チゼルトウ」をデザインしている、切り返しを少し捻ったオクスフォード、それがこの「ハリエット」だ、

少し、工夫を凝らしているが、やはり美しいクラシックなプロポーションには拘った、

この靴を店先に飾っていると、通りがかりの女性が扉を開けてくることがままある、大久保が、最初は綺麗な赤紫に染め上げていたせいかも知れない、それが陽にあたり、色が抜け、桜の古色になった、
私は気に入っているが、もう一度染め上げれば、また綺麗な赤紫を取り戻す、、、思い出が、もう一度やり直す積りさえあれば現実を取り戻せるように、、


ちなみに、デザインした靴には女性の名前を冠するのを主義にしている、「ドーヴァ」と云うよりは、「ハリエット」と口に出す方が少しは色気があるだろうという、ただそれだけの理由だが、、


「ハリエット」というのは、残念ながら気丈な彼女の名前ではない、「亀」の呼び名に由来している、
それも、我々人類の知る最も高齢の動物、ダーウインが捕まえて持ち帰ったと云われた(事実はそうではなかったが)175年生きたと推定される、一匹のガラパゴスゾウガメの名前だ、
ハリエットは2006年6月22日にオーストラリア動物園で惜しくも「心臓発作」で神に召された、我がアトリエの靴も世紀を越えて愛されることを願ってやまない、、










「BESPOKE SHOES 六義」
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by bespokerikughi | 2009-06-11 20:36 | 5. "Harriet"
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