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六義RIKUGHI
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Connoisseur`s Detail

「好事家と職人」





f0191114_2154423.jpg世の中には「好事家」という人種がいます、


こういう人たちは、他人がやらないようなことをやるのが密かな喜びで、頼まれもしないのに、美意識を洗練させることに腐心したり、粋というのを追い求めたりしています、

そして世の中には、そんな好事家を相手にとんでもない手間暇をかけて満足させようという職人もいたりします、

しかし、そんな大勢の顧客を相手にもできないから、そういう職人は表にでてこないし、よしんば、そんな職人が表通りに看板を揚げていたとしても、一般のお客には適当に普通どおりの品であしらっていたりします、



昔のヨーロッパには、そんなブラックホールみたいな世界がありました、



そういうとてつもないブラックホールは、残念ながらいまは見ることはありません、その一番の理由は、やはり「好事家」と呼べるほどの人種が少なくなったからでしょう、何故、少なくなったのか、どう変わっていったのかに言及するのはやめておきましょう、それは、何だか悲しくなるし、違うんだよなあと現在の状況に嘆息せざるを得ないだけですから、


極く一部の人しか知らないけれど、大都市ロンドンにもかつてひとりの老人のタナーがいました、この老人の仕事を厳密に「タナー」と呼べるのか、或いは革の染め職人、仕上げ職人と呼んだほうが良いのか、その仕事の特殊性ゆえに迷いますが、しかし「タナー」としか呼びようがないのでしょう、

その老人は秘伝のテクニックを駆使して、驚くべきクオリテイーの、そして今まで誰も見たことのない表情をもつ革を、たったひとりで染め上げていました、

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この我が愛用の「ヴィトクリアン シューズ」は、その老人の残していった一枚をつかっています、これは、極めて上質ですが、もとはカーフです、海の底に眠っていたロシアの鹿革でもない、第一、こんな表情をもった動物はいません、

まるで伝説にそういう動物がいたかのように、斑(まだら)に陰影をみせながら染め上げて、鏝(こて)で一本、一本細かくダイヤモンドを刻んであります、


そして、この「ヴィトクリアン シューズ」は、ロンドンから小一時間ほどの田舎町にいるシューメーカによってつくられました、60‘sサバイバーともいえる、そのシューメーカーは変わり者として有名で、いまだに長髪で、60~70年代のライフスタイルを続けています、

彼がつくったこの「ヴィトクリアン シューズ」は、極端に絞られた優雅な(絞られてはいるが、優雅な弧を描いていて、まさしくヴィクトリアンそのものを現出している)ベベルドウエスト、小ぶりなピッチドヒールというデイテールもそうですが、なにより博物館から抜け出してきたような「その時代の本質的な質」を持っているのに驚きます、コピーではないのです、


事実、ウイーン、ローマ、パリ、行く先々のビスポークメーカーが、この靴に釘づけになりました、或る意味でこの靴は、はじめて訪れるビスポークメーカーのその店での私の「扱い」を決定するパスポートになったともいえます、


多分、こんなことを云っても、半分も理解されないでしょうが、いま雑誌や、ネットの掲示板で交わされる「情報」とは別の次元に「ビスポーク」というのはあると思います、

この「ビスポーク」というのが、いまや失くなってしまって、しかし、どこかには潜んでいて表にあらわれないのは、多分、いまの時代の我々クライアントそのものが「情報」に右往左往しているだけで、本当のところは「何が優れているのか」「何が良いのか、悪いのか」かが見抜けない、「分からなく」なったからではないかと思います、

「好事家」と「職人」、古の工夫を凝らした茶室に似て、その関係は「美意識」というやっかいなモノを媒介として高みにむかっていきます、


古のそういう世界を私が懐かしく思うのは、美意識の高い好事家は、職人を品定めし、また美意識に誇りのある職人は自称「好事家」を値踏みし、ピンと張られた緊張の糸の上でお互いに挑戦し合っていて、それが作り出すものを、より高みに導いていったからです、

そういう関係のある分野は、発展、進歩し、「文化」を生み出していきました、


はたして我々は、名うての職人たちに向かって「好事家」と自信をもって胸を張れるでしょうか、、、






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by bespokerikughi | 2009-02-09 21:21 | 1.[好事家」と「職人」