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Column/ That "Last" Making 「7年目の真実、、」




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「The LAST Making」



六義の靴づくりはおかげさまで、8年目を迎えようとしています、準備期間の2年間を足せば10年余りを「やっと」経ようとしていることになります、

その10年を経て「やっと」、多分、かなりウルさい愛好家である私も「履いてみたい」と思う靴がなんとか出来るようになったのではないかと思います、モノづくりにおいては最初の黄金期といえるものに手がとどきそうな気もします、

それぞれのシューメーカーで特徴があるように、我がアトリエの特徴をあげるならば、それは、迷わず「ラスト(木型)メイキング」だといえます、


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私は、様々なシューメーカーで靴を注文し続けてきましたが、やはり大切なのはラストメイキングだと結論せざるを得ません、
六義を開くときに思ったのも、東京で真摯なラストメイキングをする靴屋が痛切に欲しいということでした、私は美しいクラシックシューズが好みです、愛しているといっても良いと思います、それも、ただ、フィッテイングが良いだけでなく、やはりダサい靴はイヤなのです、美しく、かつフィッテイングの素晴らしい靴が欲しいのです、
それは、やはりラストで決まってしまうと云わざるをえません、「東京で」というよりは、とにか「ラストメイキング」を徹底して探るシューメーカーが存在する、というのが私の「夢」だったのかもしれません、
しかし、これは、一言ですませられるほど簡単なものではなく、やはり思っている以上の手間と時間がかかるものでした、


何故ならば、「真摯」なラストメイキングというのは、ラストメーカーだけでは適わないことだからです、クライアントの足というものがあって初めて「成立する」ものだからです、

「真摯なラスト」というのは、ラストメーカーとクライアントが「実のある仮縫い」という作業を繰り返さなければ生まれません、


ラストは立体ですから、どこまでそれを追い詰めれば「正解」かということに、迷いました、それは、様々な予測しないケースをも含めて試行錯誤の連続でもありました、

その多くは、ここで文字にしても誤解を多く含むもので、その正確な真実は伝わりにくいかとは思いますが、、、

例えば、細い足に細い靴をつくってしまっては歩くと「痛い」靴になってしまいます、つい、職人もクライアントもそこを忘れて、細くあることだけに目がいき勝ちです、
しかし、細い足は、肉付きも薄い場合が多く、骨が「直に」当たってしまうのです、極端な話、採寸どおりを信じてつくると、歩行時に、或る箇所では擦れて「痛い」という現象が起こりがちです、あくまで「良い靴型」として木型を考えていかないといけません、

或いは、1mmの余裕がある箇所を、その部分だけ1mm削れば良いかというと、そこを1mm削ったことによって当然他の箇所に思わぬテンションをかけてしまい、かえって矛盾が広がる場合もあります、極端な話をすれば、その部分の1mmを削るよりは、別の部分に1mmを足してやった方が問題解決になる場合もあります、、、ことほど左様に、ラストメイキングの奥深さを悟る7年間でした、


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そして、「真摯なラスト」つくるための、大切な課題が、
どういう「仮縫い」を行うかということです、私の経験から、これこそが大事だと云う思いがありました、ヨーロッパでも、仮縫いをするシューメーカーもいますが、簡易な仮縫い靴で、時間も短いものです、

そのための「完成度の高い」仮縫い靴については、このブログでも幾度も述べているので、「仮縫い」そのものについて触れることにしましょう、


我々は、この「仮縫い」から、クライアントの方の印象も含めて、修正点をできるだけはっきりと引き出したいと思っています、

ヨーロッパでの私の仮縫いの経験から云うと、先ず単純に、あっさりし過ぎているという印象が拭えませんでした、具体的にいえば時間が短い、回数が少ないということです、これは、単純な話ですが実は本質的な問題を含んでいます、


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革靴は、革でできていますから、本来のフィッテイングというのは、履いて20~30分たって革が体温で温まった状態のときを云います、ビスポークシューズはこのときのフィッテイングが、生涯続くようにしっかりと造ることに職人は魂をかけています、(既製品は、段々、壊れてユルくなっていきます、)

これは、確かに変わります、足入れのときの固い感じとは違ってくるのです、

つまり、仮縫い靴を履いてもらって、すぐの印象を聞いても厳密には意味はないということになります、ヨーロッパの仮縫いが、履くや否や、「どうだ」と聞かれて、またたく間に終わってしまうのには、注文主としての私は違和感を感じていました、

そして、はじめてビスポークを体験するクライアントには、「どうだ」と聞かれてもはっきり「答えられない」ないのです、フィッテイングがベストなのかどうかが分からないといっても良いでしょう、これは、今まで「ビスポークの靴を履いたことがない」のだから当たり前のことです、私もそうでした、

そのためには、「仮縫い靴」に慣れて、ゆっくりリラックスしてラストメーカーと質疑を繰り返し、靴をチェックしてという落ち着いたキャッチボールが必要なことは云うまでもありません、
そして、一回で終わるのではなく、お互い納得できるまで仮縫いを重ねるのだという「安心感」も必要です、

「仮縫いのやり方」というのは、こういうことです、つまり、いかに、クライアントに「理解しやすい」努力をするかということです、これは、多くのシューメーカーがやはり一方的なような気がして、まだまだ開発、努力の余地がある分野だと思います、


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はじめての方も、「仮縫い」を重ねるほどに、慣れていきます、この「仮縫い」に慣れる時間が、私は必要だと思います、そうでなければお互いが納得する美しく、履き心地の良い靴は生まれないでしょう、



とくに、今まで既製靴しか履いてこなかった方は、立体的に足裏にあわせた靴底は、既製靴の平面的な靴底に比べて違和感を感じるはずです、六義の場合は、とくにかなり立体性をもっていますから、先ず土踏まずを押されるような感触に驚かれると思います、


仮縫い靴に足をいれてもらうと、その印象を聞きながらも、店の階段を昇り降りしてもらったり、店内をグルグル歩いてもらったりします、

これを我々は「準備運動」と呼んでいます、先ほど述べたように、革が温まるのを待つのと、「既製靴」とは違うビスポークの感触に慣れてもらうために、この「準備運動」が必要なのです、

この間に、色々なことを話ながら、もちろん、「歩く状態」を見ながら様々なチェックをしていきます、この「歩く状態」というのが重要で、私が座ったまま仮縫いをするシューメーカーを信じないのは、靴はクライアントの歩き方、そのときの重心のかけ方で、ラストの形状も変える必要があるからです、このことを、はっきり知っているのはラストメーカーです、
私は、スーツの仮縫いのときには必ず、店の階段を昇ってもらって、階段の上からクライアントの方の足の出方をチェックします、これはトラウザーズの重心の取り方を計るわけですが、靴の場合はもっと大切なポイントです、



靴の「仮縫い」については、大久保が主導しますが、時折、私も混ざって、クライアントの方と色々な話をするのは、「仮縫い」そのものを愉しく、リラックスしたものにしたいと同時に、「公平な」仮縫いをしたいという思いがあるからです、
これは、テーラー部門でも同じですが、六義はチームで「仮縫い」に臨みます、一対一では、問題がクリアにならないままになってしまう場合もあると思うのです、若い私はシューメーカーに云いずらかったり、気がつかなかったりという経験をイヤというほどしました、シューメーカーによっては、それに気がつく人と、つかない人がいます、

多くのシューメーカーの問題点は、自身がビスポークシューズの「クライアント」になった経験がない、コトにあると私は思います、

私が入ることで、それを代弁したり、噛み砕いたり、或いは問題点をクリアにしたいのです、



ラストメイキングと合わせて、この「仮縫い」の仕方については、この5年間で多くを学びました、そこには、どういう尋ね方をすれば、クライアントがフィッテイングの感触を答えやすいか、ビスポーク初体験のクライアントをどうリラックスさせるかというリアルで細々した点も含めて「改良」すべき点が多々ありました、


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最後に「スタイル」の話をしておきましょう、この5年間で創り上げた靴は、やはり六義のスペシャリテである「アーモンドトウ」のクラシックシューズが多かったように思います、

私自身も、歳を経るごとに、美しいアーモンドトウのクラシックシューズが愛しくなっています、結局、すべてを明らかにしていくと、歩きやすく、良くフィットした靴を選び、いっしょに歳を重ねていってくれるクラシックシューズに突き当たるのだと実感します、







「BESPOKE SHOES 六義」
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by bespokerikughi | 2009-05-02 14:19 | 3.The LAST Making